研究ノート 「絵本作家・わかやまけんの岐阜時代から 紙芝居制作、図書館活動と教育について」鳥羽 都子
岐阜出身の絵本作家の創作の源を追う本稿では、意匠(デザイン)の先進性や先駆者、行政主催の公募展に戦後早くから商業美術(グラフィックデザイン)部門があった地域性が作家のキャリアに大きく影響していること、また、ロングセラーの絵本制作の裏側にクラフトマンシップがあることを示唆している。
岐阜県美術館では、筆者が担当する現代美術分野においては、例えば、アーティスト・イン・レジデンス企画で、作家が美濃和紙の紙漉き技術を習得し、職人と深い関係を築き、地域の歴史を美濃和紙の現代的な表現によって呈示するなど、伝統工芸の文化的価値を源とした新しい創造の場となっている。伝統工芸に関わる創造的循環に美術館や表現者が加わることが、クリエイティブ産業としてより広い可能性をもたらすであろう。